「うちだけのオリジナル生地」を、もっと身近に。

「オリジナル生地を作りたいけれど、ロットが大きすぎて手が出ない」
バッグやポーチを作るクリエイターさん、小売店様、メーカー様から、そんな声をよく伺います。

一昔前まで、生地のOEMといえば“大ロット前提”が当たり前でした。
ところが今、技術の進化と加工方法の多様化によって、小ロットからの生地づくりが現実的な選択肢になりつつあります。

今回は、普段からOEMの相談を数多く受けている営業担当者に、
「実際のところどうなの?」という疑問をぶつけてみました。

生地OEMのプロに聞く「いま」と「これから」

まずはプリントの基本から。スクリーンとインクジェット、何が違う?

―― 最近「小ロットでできる会社が増えている」とよく聞きますが、背景にはどんな変化があるのでしょうか。

担当者:
大きな変化は、インクジェットプリントの普及ですね。
これまでは、いわゆるスクリーンプリント(版を作って刷る従来の方法)が主流で、
1柄あたり約3,000m以上、といった大きなロットが前提でした。

―― 3,000mとなると、個人や小規模ブランドには現実的ではないですよね。

担当者:
そうなんです。1色500m × 6色で3,000m、みたいなイメージなので、
「作ってみたいけど、そこまでの量はさすがに…」という方がほとんどでした。

そこへ登場したのがインクジェットプリントです。
家庭用プリンターの“布版”のようなイメージで、データから直接、生地にインクを吹き付けていく方式ですね。

Q. インクジェットって、どんなプリント?

―― インクジェットプリントの特徴を、あらためて教えてください。

担当者:
大きなポイントはこのあたりです。

  • 写真のような細かな柄やグラデーションも再現しやすい
  • 色数の制限が少なく、フルカラーの世界観を出しやすい
  • 100〜200m程度の小ロットからでも対応可能なケースが増えている

その分、スクリーンに比べるとメーター単価は少し高くなりがちですが、
「そもそも3,000mも要らない」というお客様にとっては、
総額で見ればインクジェットの方が現実的なことも多いです。

―― 10mくらいから受ける国内業者さんも出てきている、と聞いたことがあります。

担当者:
はい、探せば「10mから受けます」というところもあります。
もちろん、その分かなり高額にはなりますが、
個展や限定コレクション用など、ピンポイントな用途では十分価値があると思います。

Q. それでもスクリーンプリントが選ばれる理由は?

―― ここまで聞くと「全部インクジェットでいいのでは?」と思ってしまいますが、今もスクリーンで作るメリットはなんでしょう。

担当者:
あります。むしろ服地や長く続けたい定番柄ほど、スクリーンを選ぶケースが多いです。

  • インクの重なりやにじみが、生地の凹凸と相まって立体感になる
  • “プリントした布”ではなく、“柄を織り込んだようなぬくもり”が出る
  • ある程度のロットを作る前提なので、メーター単価を抑えやすい

インクジェットは本当に綺麗で、写真のようなリアルさも出せますが、
逆に「フラットで、どこか“印刷物っぽい”」と感じる方もいます。
バッグやポーチには相性がいい一方で、
「服にすると、ちょっと冷たい印象になる」という声も実際ありますね。

―― つまり、用途やブランドの世界観によって、使い分けが大事ということですね。

担当者:
まさにそこです。

  • 鮮やかさ・写真のような表現 → インクジェット
  • 風合い・ぬくもり・定番感 → スクリーンプリント

どちらが“正解”ではなく、「どんな商品にしたいか」から逆算して選ぶイメージですね。

オリジナル生地ができるまで

Q. 具体的な流れを教えてください

―― オリジナル生地を実際に作る場合、どんなステップで進んでいくのでしょうか。

担当者:
ざっくり分けると、こんな流れになります。

  1. コンセプト・デザインの相談
  2. 配色案づくり
  3. マスサンプル(試しプリント)
  4. 修正・ブラッシュアップ
  5. 本生産〜納品

Q. デザインは、お客様が用意しないとダメ?

―― まず1つ目、「コンセプト・デザインの相談」ですが、図案はお客様が用意しないといけませんか?

担当者:
必ずしもそうではありません。

  • お客様がすでにデータをお持ちの場合
  • 「猫のリアルな総柄が欲しい」「北欧っぽい大きめの花柄がいい」など、
    雰囲気だけお持ちの場合

どちらもあります。

後者の場合は、お客様のイメージを伺いながら、
こちらで一緒に企画・デザインを組み立てていくことも可能です。
「リアル寄りの猫なのか」「イラストっぽい猫なのか」といった方向性から整理していきます。

Q. 配色は誰が決める?どれくらい作る?

―― 1柄に対して、色展開はどのように決めていきますか。

担当者:
多くの場合、6〜8配色くらいの候補を出します。

  • ベーシックなベージュ・ネイビー
  • シーズン感の出る差し色
  • 思い切ったポップカラー など

「お客様側で配色を決めて持ち込む」パターンもありますし、
「イメージだけ預かって、こちらで色提案を出す」こともあります。
どちらも対応可能です。

Q. 「マスサンプル」って何ですか?

―― コミュニケーションの中でよく出てくる「マスサンプル」とは?

担当者:
簡単に言うと、“試し刷りの反物”です。

データや紙の上だけでは分からない、

  • 実際の生地に乗せたときの色の出方
  • 思っていたより暗い/明るい
  • 柄の大きさがバッグ向きか、服向きか

といった部分を確認するために、
本番と同じ条件で少量だけプリントしたものを「マスサンプル」と呼んでいます。

ここで、

  • 配色を絞る
  • 柄のサイズを調整する
  • 色の出方のチェック

といった修正をかけていきます。

Q. 依頼してから納品まで、どれくらいかかる?

―― スケジュール感はどれくらいを見ておけばいいでしょうか。

担当者:
本生産に入ってからの納期は、おおよそ1ヶ月前後です(時期によって多少前後します)。

データ調整〜マスサンプル確認〜修正といった前工程も含めると、
トータルで1〜2ヶ月程度をイメージしていただくと良いと思います。

マスサンプルで一発OKが出ればかなり早く進みますし、
「色をもう少し詰めたい」「柄サイズを再調整したい」といった修正が重なると、その分だけ少し伸びる、というイメージですね。

ラミネート・キルティングなどの「二次加工」

―― ここまではプリントのお話でしたが、「生地+加工」まで含めたOEMも可能ですか?

担当者:
はい、むしろラミネートだけ・キルティングだけの加工依頼もよくあります。

Q. ラミネートはどんなことができますか?

担当者:
ラミネートは、生地の表面に透明のフィルムを貼る加工です。

  • 艶あり・艶消しといった仕上げの違い
  • フィルムの厚み(例:0.05mmなど)の選択

など、仕様のバリエーションがあります。
バッグ、ランチグッズ、ポーチなどには非常に相性が良いですね。

ロット感としては仕様によりますが、
約12m前後からご相談いただけるラインもあります。

Q. キルティングも小ロットでいける?

担当者:
いけます。
中わたを挟んでステッチをかける、いわゆる「キルト生地」の加工ですね。

  • 入園・入学グッズ
  • バッグやマット類

などに特に需要が高く、
約10m〜1反程度からでも加工可能な体制があります。

実は、私たちの店頭に並んでいるキルト生地の多くも、
もともとは“普通の生地”として仕入れたものを、
後からキルティング加工しているものなんですよ。

ファスナー・テープまで含めたトータル提案

―― 他の生地メーカーと比べたときの強みはどこにありますか。

担当者:
一番大きいのは、生地以外の副資材もフルラインナップで扱っている点です。

  • 生地に合わせたファスナーの色・長さの提案
  • 持ち手テープ・パイピング・タグなどのコーディネート
  • 同柄・同シリーズでのキット化のサポート

たとえば、

「このオリジナル生地でポーチを作りたい」

というご相談なら、

  • 表地(オリジナルプリント)
  • 裏地用の無地やストライプ
  • ファスナー(務歯とテープの色)
  • 持ち手テープやタグ

まで含めて“完成形を想像できるところまで”一緒に組み立てていきます。

―― 生地メーカーと資材問屋の“間”をつないでくれるイメージですね。

担当者:
そうですね。
生地メーカーさんは「生地まで」、資材専門店さんは「資材まで」になることが多いのですが、
私たちはその両方を繋いで、トータルコーディネートでご提案できるところが強みだと考えています。

どんなお客様に向いている?

Q. 具体的なイメージを教えてください

―― どのようなお客様・プロジェクトにOEMは向いていますか。

担当者:
例えばこんな方々です。

  • オリジナルキットや限定セットを展開したい手芸店・専門店様
  • ネットショップで「ここでしか買えない生地」を持ちたい事業者様
  • ブランドの世界観を表現したノベルティや販促品を作りたい企業様
  • バッグ・ポーチ作家さんなど、オリジナル柄で作品を展開したいクリエイターさん
  • 既製生地でヒット商品があり、「その作品専用の柄」を持ちたい方

「デザインはあるけれど、どう形にして良いか分からない」
「ロットやコスト感のイメージが湧かない」
「まずは少しだけ作って反応を見たい」

といったご相談段階からでも、問題ありません。

最後に

一人で悩まなくて大丈夫です!

―― 最後に、オリジナル生地を検討されている方へメッセージをお願いします。

担当者:
インクジェットの登場で、小ロット生産はまさに“革命”でした。
一方で、スクリーンプリントやキルティング・ラミネートといったアナログな技術の価値も、まったく失われていません。

大事なのは、

「誰に、どんな用途で、どんな世界観を届けたいか」

を一緒に整理しながら、
最適なプリント方法・ロット・素材・副資材まで含めて設計していくことだと思っています。

「いつかオリジナルを」と思っていた方も、
「ロットがネックで諦めていた」方も、
まずはアイデアレベルからでも、気軽にご相談いただければ嬉しいです。

企画段階から納品まで、
生地づくりのパートナーとして、一緒に製作させていただきます。

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