
目次
はじめに
編集部: 今回は「OEM・別注商品の提案」をテーマに、32年目のベテラン営業・栗原仁さんにお話を伺います。
お客様の「オリジナル商品の開発」や既製品をもとにした「別注商品」といったいわゆる「OEM商品」の提案について、営業担当者としてどのように動き、どのような工夫をしているのか、その裏側までじっくり掘り下げます。
栗原さん、本日はよろしくお願いします!
栗原さん: どうぞよろしくお願いします。営業現場のリアルを少しでもお伝えできればと思います。
編集部:まずは、簡単に自己紹介をお願いします。
栗原さん:入社して以来、営業一筋・今年で32年目の52歳になります。
営業としてこれまでにいろんなお客様やエリアを担当してきましたが、入社当初は大阪府内を担当して、その後近畿圏全域、関東エリアの新規開拓など営業エリアの全国拡大に注力してきました。近年は、ECサイトを運営されている法人様の新規取引をメインに営業活動を行っています。

OEM・別注提案の背景と需要の変化
編集部: では、早速ですがOEM提案についてお聞きしたいと思います。近年OEMでの提案が増えていると伺っていますが、どのような背景がありますか?
栗原さん: それは、お客様のニーズが非常に多様化したことからです。最初は、既製品のラインナップでの提案で揃えることが多かったのですが、次第に「こんな商品はないか?」「この形や色が欲しい」など、細かなカスタマイズの依頼が増えました。最初は小さな要求から始まりましたが、それがOEMや別注商品の形に発展していきました。
編集部: そうしたお客様からの要望をどのように捉えて、提案していったのでしょうか?
栗原さん: 基本的には、お客様がどんな商品を作りたいのか、そしてその目的は何かを深く理解することが大切です。それから、そのニーズに合った形で、どんな素材やデザイン、製造方法が適切かを考え、最適な提案をしていきます。OEMは他社では対応しきれない、お客様の「できない」を「できる」に変えることが一番の魅力ですね。
依頼の具体的なプロセス
編集部: では、具体的にOEM依頼を受けるプロセスについてお話しいただけますか?
栗原さん: まずはお客様からの依頼を受けて、その商品の特徴や必要な仕様を詳しくヒアリングします。その後、製造に必要なロット数、納期、価格を考慮し、いくつかの提案を行います。
編集部: 提案をする際に、特に意識している点はありますか?
栗原さん: 一番大事なのは、お客様が求める商品をどれだけ実現できるかという点です。たとえば、あるカバンの金具をオーダーする場合、色や形、サイズに関する細かな調整が必要になります。普通の営業なら、「これしかないです」と言って終わりですが、私たちはお客様の希望に合わせて、メーカーと直接交渉し、最適な製品を提案します。
編集部: お客様の希望に寄り添っていく対応は、営業さんにとってもメーカーとの日々の情報交換が重要になるんですね!
栗原さん: はい、確かにそうですね。営業として、他の人が「無理です」と言ってしまうような難しい案件でも、メーカー担当者や加工業者と条件を交渉して、何とか形にしていくのが自分の役目です。

OEM依頼元と特徴
編集部: OEMの依頼をしているお客様にはどんなお客様が多いですか?
栗原さん: 手芸小売店さん、作家さん、バッグ加工の製品屋、アパレルの縫製会社など、様々なお客様がいらっしゃいます。それぞれのお客様が独自のニーズを持っていて、特にオリジナルなアイテムを作りたいという依頼が多いですね。それぞれの業界に特化したニーズに応えながら、個別の提案を行っています。
編集部: では、お客様がOEMや別注商品をオーダーされるのはどのような商品がありますか?
栗原さん: 例えば、オリジナルのファスナー、ボタン、テープ、生地、そしてオリジナルキットを作りたいというお客様が多いです。手芸に関連するアイテムは非常に個別性が強いため、規格品ではお客様の要望を満たせない事が多いんですね。そのため、オーダーメイドで商品の仕様を決め、一緒に作り上げていくというプロセスが求められます。
編集部: OEMや別注はオリジナルの開発を目的で依頼されることが多いのでしょうか?
栗原さん: 実は、最初からOEMや別注という形で依頼されることは少ないです。多くは、既製品では見つからないから「別注できないか?」という依頼が多いですね。既製品の選択肢では満足できないお客様が、自分たちのニーズにぴったり合った製品を作るために別注を希望するというケースがほとんどです。そうしたお客様の要求を形にするのが私たちの役目です。
具体的なOEM・別注商品の実例
編集部: では、実際に行ったOEMの事例について、具体的に教えてください。
栗原さん: はい、いくつかの実例をご紹介します。
1. カバンの金具のカスタマイズ

- お客様: 大阪府【バッグ製造業】
- 依頼内容: お客様が販売するカバンの金具の形、色、サイズをオリジナルに変更したいという依頼。
- 対応内容: 既存の金具では満足できないということで、メーカーと交渉し、希望の形状や色で金具をカスタマイズ。特にサイズについては、お客様が求める形に合わせるため、詳細な調整を行いました。
- 参考ロット: 100セット~
- 納期目安: 約1ヶ月
2. オリジナルの生地パターン作成

- お客様: 神奈川県【手芸小売店】
- 依頼内容: お客様が独自のキルティングを生地に落とし込みたいという依頼。特に、パターンやステッチの入り方について細かく指定がありました。
- 対応内容: お客様から提供されたデザインを元に、キルティングのパターンを作成。配置や縮尺の調整を行い、指定通りのデザインを生地にキルティング加工しました。
- 参考ロット: 1柄200m~
- 納期目安: 約1ヶ月
3. ソーイングセットのオリジナル企画

- お客様: 秋田県【オンラインショップ運営】
- 依頼内容: お客様が販売するソーイングセットの内容をオリジナルで作りたいという依頼。中身にはボタン、ファスナー、テープ、糸などが含まれていました。
- 対応内容: 既存のセットを基に、必要なアイテムをカスタマイズ。さらに、パッケージデザインもお客様と相談し、オリジナルのものを作成しました。
- 参考ロット: 100セット~
- 納期目安: 約2ヶ月
4. オリジナルデザインのプリントファスナー

- お客様: 神奈川県【手芸作家様】
- 依頼内容:お客様からオリジナル生地を元にしたデザインのプリントファスナーを作りたいという依頼がありました。ファスナーのテープ部分にプリントし、オリジナル生地に合わせたデザインを提供したいという要望でした。
- 対応内容:お客様のデザインの生地を参考に色味や印刷の細部を調整。実際に試作を行いながら進めました。ファスナーの種類(開閉部分のデザイン、素材)やサイズ、カラーもお客様のニーズに合わせてカスタマイズしました。
- 参考ロット:1柄100本~
- 納期目安: 約2ヶ月~3ヶ月
5. 教材用キットのセットアップ

- お客様: 愛媛県【教育福祉団体】
- 依頼内容: 学校で使用する教材キットの製作依頼。刺しゅう糸の組み合わせを自由にカスタマイズしてキットにしたいという要望がありました。
- 対応内容: 教材に必要なアイテムを一から組み立て、デザインやパーツを調整しました。セットの内容やパッケージもお客様の指示に従い、作り上げました。
- 参考ロット: 100セット~
- 納期目安: 約1ヶ月
ロットや納期について
編集部: OEM製品を依頼する際、ロット数や納期はお客様によって異なるかと思いますが、どのように対応していますか?
栗原さん: はい、ロット数や納期については、お客様の要望に応じて柔軟に対応しています。ただし、ロット数は使用する材料によって変動することがあります。例えば、特注の生地や金具を使う場合は、最小ロットが高くなることがありますが、一般的なアイテムであれば、比較的小さいロットで対応可能です。また、素材の調達状況や製造方法にも影響されるので、詳細はお客様と相談しながら進めていきます。
編集部: なるほど、材料によってロット数が変わるというのは重要なポイントですね。
栗原さん: そうですね。例えば、オリジナルキットや特注の布地を使用する場合、最小ロットが必要になることが多いです。それに対して、既製の部品や標準的な素材を使った製品であれば、比較的少ないロット数でも製造できます。ですので、ロット数や納期については、使用する材料とお客様の希望に応じて最適なプランを提案しています。
編集部: ロット数については、材料の選定が大きく関わっているのですね。納期はどうでしょうか?
栗原さん: 納期も材料に依存する部分があります。特に特注品や輸入品を使う場合、仕入れや加工に時間がかかることがあります。そのため、早めのご相談があれば、納期についても調整しやすくなります。急ぎの場合は、可能な限り対応しますが、最小ロットや特別な素材を使う場合は少し余裕を見ていただくことがあるかもしれません。
編集部: それでは、ロット数や納期に関しては、使用する材料に応じた柔軟な対応をされているということですね。
栗原さん: はい、まさにその通りです。お客様のニーズに合わせて最適な材料を選定し、その材料に最も適したロット数や納期で製造することを心がけています。どんなご要望でも、まずは担当営業とご相談いただければ、しっかりサポートさせていただきます。

OEM・別注商品における日本紐釦の強み
編集部: 営業として、栗原さんが大事にしていることは何ですか?
栗原さん: 営業として一番大切なのは、お客様との信頼関係を築くことです。どんなに良い商品でも、お客様に信頼していただけなければ、長続きしません。また、メーカーとの交渉を通じて、お客様のニーズに応える製品を作り上げていくことが営業の役目です。
編集部: OEMを受ける際、他社とは違う日本紐釦の強みはどこにあるのでしょうか?
栗原さん: 日本紐釦の強みは、創業以来100年以上この業界に精通した商売を続けているので、商品に対する深い知識と仕入れ先との結びつきが強く、幅広い分野で商品展開をしていることですね。また、これらを最大限活かして柔軟に対応できる力です。他社ができないような細かなカスタマイズや、特殊な製品の提案ができる点が大きな強みだと思います。
最後に:栗原さんにとって手芸とは

編集部: 最後に、栗原さんにとって手芸とは何ですか?
栗原さん: 手芸は、単なる商売の道具ではなく、情熱を注ぐ対象です。お客様に満足してもらうためには、やっぱり知識を深めて、いい提案をし続けることが大事ですね。僕としては、営業として、お客様と信頼関係を築いていくことが一番重要だと考えています。特に、お客様とのコミュニケーションや人とのつながりは営業で絶対負けない意識を持っています。お客様との信頼関係があってこそ、あらゆる提案が響くと思っていますね。
編集部: なるほど。お客様に対する愛情や信頼が、栗原さんの営業活動の根底にあることがよく伝わりました。今日は貴重なお話をありがとうございました!
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